不動産の相続と売却の手順とは

あなたの親族が亡くなり相続が発生したら、故人が不動産をお持ちだった場合には不動産の相続手続きをしなくてはなりません。

不動産相続は、他の財産とは異なる手続きがあり、いろいろと面倒なことが多いですが、相続が始まった以上は避けて通れませんね。

ここでは一つ一つ解説いたします。

遺言書の確認をする

まず、故人が生前に遺言書を作成していたかを調査する必要があります。

理由は、遺言書があると無いとでは、その後の手順が大きく変わるためです。

遺言書があるときは、遺言通りにそれぞれ財産を相続していきます。

そして遺言書がないとき、これから説明するように、誰がどの財産をどれだけ相続するかを、法定相続人全員で話し合って決めなければいけません。

遺言書は公証役場で確認できる

具体的な調査として、まず「公正証書遺言」が有るか否かを最寄りの公証役場で遺言検索により確認します。

公証役場とは、公正証書を作成する公証人が必ず1名以上は配置されている法務局の管轄機関で、全国に300箇所くらいあります。

公証役場では必要書類を揃えて行かないと無駄になる可能性があるため、まず電話で相談します。

法務局に遺言書が保管されている場合もある

次に法務局に遺言書が保管されていないか確認します。

「自筆証書遺言保管制度」で遺言書を作成している可能性があるからです。

自筆証書遺言保管制度とは、自筆で書いた遺言書を法務局で保管してもらう制度です。改ざん、紛失や隠蔽のリスクがありません。

最初に法務局で遺言書の形式面をチェックしてもらえるため、法律に則った形式の遺言書であることが確認できています。

費用も数千円で済むので、手軽でメリットが大きいです。

遺言者が死亡した場合には、法務局から相続人に遺言書保管について通知があります。そのため知らずに放置してしまうリスクを回避できます。

その後は各相続人が全国の法務局で遺言書のデータを閲覧できるようになります。これにより相続人がそれぞれ遠方にいるようなケースでは、大きく時間と手間を節約することができます。

このように、自筆証書遺言保管制度はとても良く出来た制度です。

自筆証書遺言保管制度を使った遺言が存在するかどうか不明で、法務局から通知が届かない場合は、念の為必要書類を揃えたうえで管轄法務局にて遺言書保管事実証明書の交付の請求をします。

故人が通知を希望していない場合や他の相続人に通知を送っていたり、何らかの理由で通知が届かないケースが考えられるからです。

自宅にあった遺言書は開封しないこと

自宅やその他の場所で遺言書を発見した場合には、開封せずに家庭裁判所の検認を受ける必要がありますのでご注意ください。

検認を受けることにより、遺言書で不動産登記や銀行預金の手続きが出来るようになります。

検認では遺言書の形式や状態を調査して、その結果を検認調書という公文書にしてもらいます。

具体的には封の状態、筆跡と印鑑の照合などをしますが、遺言書の有効無効を判定確認するものではありません。

法定相続人を具体的に洗い出す

相続で遺言書がないときは、法定相続人の間で遺産分割の協議をして相続配分を決めなくてはならなりません。

そのためには法定相続人が誰で、どこにいるかを洗い出す必要があります。

法定相続人とは、被相続人の財産を相続できる人のことです。故人の財産を誰が相続できるのかは民法で具体的に定められています。

法定相続人は基本的に配偶者と子供

法定相続人は、基本的には故人の配偶者と子供全員です。

故人が過去に離婚や死別を経験している場合、亡くなられた時点では配偶者がいないことになります。このときは子供全員が法定相続人になります。

別の配偶者との間出来た子や、認知をした子も同じように法定相続人です。ただし、配偶者の連れ子で養子縁組をしていない場合には法定相続人になりません。

故人よりも先に亡くなった子供に子供(故人からみて孫)がいる場合は、その方も法定相続人の 1人となります。これを代襲相続人といいます。

故人に子供がいなければ親が法定相続人

故人が独身で子供がいない場合、故人の両親が法定相続人です。

また、故人が結婚はされていたものの子供がいないときは、故人の配偶者と両親が法定相続人になります。

故人の親も子もいなければ兄弟姉妹が法定相続人

ただ故人の両親は、故人よりも先に亡くなられていることがほとんでです。故人の両親が亡くなられているときは、故人の兄弟(姉妹)と故人の配偶者が法定相続人になります。

法定相続人となる兄弟・姉妹は、父親が同じで母親が違う方と母親が同じで父親が違うも含むことに注意しましょう。

そして、すでに亡くなっている故人の兄弟姉妹に子供(故人からみて甥・姪)がいれば、その方は代襲相続人として法定相続人となります。

法定相続人は故人の戸籍ですべて確認できる

法定相続人については、ここまで説明したとおりです。

法定相続人を全員洗い出す方法としては、故人(被相続人)が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本や除籍謄本を取得することです。

その他、コンピューター化以前の改正原戸籍謄本も取得します。

除籍謄本とは戸籍の中に入っている人が結婚、転籍、死亡などで誰もいなくなった戸籍の謄本です。

故人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本・除籍謄本を取得すると、法定相続人となる可能性がある親・兄弟姉妹・子・認知している子・養子の有無がわかります。

ですから、まずは戸籍謄本や除籍謄本を取得して法定相続人を洗い出します。

法定相続人がどこにいるか調べる

法定相続人を洗い出して連絡先がわからない方がいましたら、親類のなかでその方を知っている人がいないか良く調べます。

誰も知らなければ、本籍地で戸籍の附票を取得して現住所を調べることができます。

財産を調査する

続いて故人の財産を全て調査します。

法定相続人同士で遺産を分け合うのは、不動産だけではありません。

全ての相続財産について誰がどの財産を相続するか、不動産を含めて全て決める必要があります。

相続財産の種類は預貯金、不動産、株式などの有価証券、ゴルフ会員権、宝石、貴金属、自動車などがあります。

不動産は市区町村役場で名寄帳を取得すると、故人名義の不動産が一覧で把握できます。

注意点としては、各市区町村ごとに取得してなくてはならないのと、今年取得したばかりの不動産は掲載されていません。また、今年になってから売却した不動産は未だ掲載されています。

ですので、名寄帳に基づいて登記事項証明書を取得する必要があります。

株式のなかには新聞に株価が載っている上場銘柄の他に、中小企業の株式(未上場株式)も含まれます。

故人が会社の経営者か共同経営者等だった場合には、ほぼ未上場株式を持っていらっしゃいます。

中小企業は実際に株券を紙で発行していないケースが多いので、机の中や金庫を探しても株券は見つかりません。

会社の株主名簿に記載されていますので、そちらで確認します。

借金など負の財産としては住宅ローン、アパートローンなどと、未払いの税金などです。

ちなみに、住宅ローンやアパートローンなどは団体信用生命保険に加入していれば、保険金ですべて返済できる仕組みになっていますので、その場合は負の財産になりません。

遺産分割協議を取りまとめる

遺言書がない場合には、全ての財産を法定割合にて相続するか、遺産分割協議書を作成して遺産の取り分を決めます。

遺産分割協議書とは、法定相続人同士で協議し同意した内容をまとめて書類にしたものです。

遺産分割協議書は、家庭裁判所で相続放棄の手続きを完了した人以外の、相続人全員の同意と署名捺印が必要です。

不動産については、該当する複数の相続人が全員売却の意志があるときは、代表者1名が登記名義人となり相続登記を行い、売却代金を約束した割合で分配する方法を取ることが多いです。

そうした方が圧倒的スムースに取引が出来るからです。

また、相続した不動産に引き続き住み続ける方がいる場合、実際に住む人が相続されるのがよいでしょう。

その場合は、別の財産を他の相続人の方が相続されるケースが多いです。

自宅用不動産はお金に換算すれば別の財産より高いこともありますが、実際の相続では全員に平等に同じ金額で分けることの方が珍しいと言えます。

必要書類を集めておく

相続登記に必要な書類は次のようなものになります。

  • 相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書、住民票
  • 被相続人の戸籍謄本と除籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票と戸籍の附票
  • 遺言書もしくは遺産分割協議書
  • 不動産の登記事項証明書・権利証(登記識別情報)
  • 固定資産評価証明書
  • その他

上記の必要書類について、ここから説明します。

相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書、住民票

故人がお亡くなりになった日以降に発行されたものを取得します。

被相続人の戸籍謄本

被相続人が出生してから死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍、原戸籍)を取得します。

本籍地が遠方の場合など、郵送でも取得できます。

被相続人の住民票の除票と戸籍の附票

こちらも郵送で取得できます。

遺言書もしくは遺産分割協議書

公正証書遺言と法務局に保管されている自筆証書遺言は家庭裁判所の検認は不要ですが、その他の遺言書は検認を受け検認調書を取得します。

遺産分割協議書には、全員の署名捺印と印鑑証明を取得しておきます。

不動産の登記事項証明書、権利証(登記識別情報)

登記事項全部証明書は、不動産の地番、家屋番号、地目、地積、床面積、構造、種類、所有権者、抵当権者などが記載されています。

権利証は和紙の書類で、書類の表紙には「登記済証」となっていることが多いです。

現在では和紙の登記済証ではなく、「登記識別情報」という名のA4の特殊な紙に12桁の数字と符号が印字されていて目隠しシールが貼ってあるものが、通称「権利証」です。

ずっと以前から所有していた不動産の場合は、和紙の登記済証であることが多いです。

なお、登記識別情報の目隠しシールは剥がさないように保管しておきます。

固定資産評価証明書

都税事務所・市役所・町役場の固定資産税課で取得します。

不動産の評価額が記載されており、併せて公課証明を取得すると固定資産税・都市計画税の額が記載されています。

その他

必要に応じて故人が保管していた、土地の測量図、建物の図面、建築許可証、検査済証などを集めておくと良いです。

相続登記(不動産の名義変更)

遺産分割協議書が完成しましたら、不動産の名義変更(相続登記)を行います。

所有者不明の山林問題が顕在化したことから、不動産の相続登記は相続の開始と所有権の取得を知った日より3年以内に行わなければならないと法律で決まりました。(10万円以下の過料)

不動産の相続登記は、管轄する法務局に申請して行います。

平日の日中に何度も時間を取れないケースや、相続人が複数であるなど申請が煩雑で難しいケースでは、全てプロに任せてしまった方が良いかもしれません。

不動産の査定・売却

不動産はまず不動産会社に査定を依頼して説明を受けます。

査定の時点では相続登記がされていなくても構いません。

不動産の売却方法には不動産会社が買主となって買取りする場合と、不動産会社の営業が他の買い手を見つける仲介とがありますので、状況にあった方法で売却することになります。

例として買取りが向いているケースは

  • 手間と時間をかけたくない
  • 周りに知られたくない
  • 売却が難しい不動産である
  • 売却後に建物の不具合などの責任を負いたくない
  • 土地がかなり広い
  • 当時の工事に必要だった許可証や検査済証がない

相続税の申告・納付

相続税は、相続の発生から10ヶ月以内に申告納付を行います。

各相続人はそれぞれ相続税額を計算し申告書を作成します。

相続税の納付書はインターネットでは取得できませんので、最寄りの税務署へ行って多めに貰ってきます。

納付書は各相続人がそれぞれで記入し納付します。

税理士に依頼する場合には、相続を扱っている税理士が良いです。

不動産を売却したとき相続税以外にかかる税金

不動産を売却したとき、相続税以外にもさまざまな税金がかかります。

必要な税金を以下の表にまとめました。

種類概要税額
登録免許税名義変更登記にかかる税不動産価額の0.4%
印紙税売買契約書に貼付する印紙売買代金に連動
譲渡所得税売却利益に対してかかる税所有期間5年以下 30%
所有期間5年超  15%
住民税売却利益に対してかかる税所有期間5年以下 9%
所有期間5年超  5%
復興特別所得税売却利益に対してかかる税所有期間5年以下0.63%
所有期間5年超 0.315%
消費税仲介手数料等にかかる税

まとめ

これまで解説したとおり、相続で不動産を売却するためには、多くの手順を踏む必要があります。

法定相続人同士での協議や、書類集め、専門家への依頼など、かなりの重労働であると言えます。

また、不動産を相続して売却するという経験は人生の中でも1度あるかないかです。

そのため相続登記や売却、申告納税の手続きが思うように進まないケースがほとんどです。

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不動産を家族信託するのはなぜ?

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