高齢者5人に1人が認知症になると言われています。
もし、あなたもしくはあなたの親が認知症になってしまったら、財産がどのようになってしまうのか考えたことがありますでしょうか。

ここでは、家族信託を使って事前に対策をたてる方法について、概略を説明します。
家族信託とは
まず始めに家族信託の仕組みについて説明します。
財産を所有しているお父様が「委託者」、子供が「受託者」となるのが最も多いパターンです。
家族信託が生前贈与と異なるのは、「受益者」を設定できることです。
受益者とは信託用語で、信託で発生した利益を受け取る権利を有する者をいいます指します。
不動産の名義は「受託者」である子供に移しますが、例えばそれがアパートだった場合、家賃収入は「受益者」であるお父様のものとなります。
家族信託の目的は、親の終身の生活支援のためであり、家族のためなのです。
家族信託のメリット
家族信託には4つのメリットがあります。
このメリットについて、ここからくわしく説明します。
親の認知症対策が出来る
家族の財産管理の面からも、親の認知症対策はとても重要です。
家族信託の一番のメリットは、親が認知症になって意思能力が無くなってしまったときに、子供が親に代わって不動産や他の財産にまつわる手続きを行えることです。
認知症対策をしていなかった場合、資産が凍結されてしまう大きなリスクがあるのです。
ちなみに家族信託は遺言信託とは全く違うものですので、混同しないようにしましょう。
相続争いを防ぐ効果がある
家族信託は、遺言の代わりとしても効果が絶大。具体的な相続のプランを作ることができます。
誰にどの財産を相続させるかを親の意思で決めることができ、その次の代まで決めておくことも出来ます。
例えば、お父様が亡くなったとき、財産の半分がお母様に移るとします。つぎにお母様が亡くなったときに誰にどの財産を渡すのかを、はっきりさせておくことができるのです。
相続争いは誰にでも可能性があり、特に中小企業のオーナーであれば、かならず対策をしておいてもらいたいのです。
家族以外の社員や取引先まで影響がおよぶ問題になるからです。
不動産オーナーについても同様に、かならず対策をしてください。
共有不動産を回避する
これは家族信託特有のメリットではありませんが、不動産が共有で相続されることは避けることができます。
共有名義の不動産は問題だらけですので、あらかじめ避けておくのがよいです。
不動産を夫婦以外で共有にすることは避けましょう。
また、既に共有名義の不動産があるときは、これらの管理運営を1人に任せる旨の家族信託契約を結ぶことによって、いちいち事あるごと所有者全員の署名捺印を取らなくてもよくなるのです。
成年後見制度を使わずに不動産や金銭の管理、売却もできる
成年後見制度はなるべく使わないほうが良いです。
意思能力がない親の財産を売ったり貸したりするためには、成年後見制度を使うことになるのですが、実際に家族の生活のためとか、相続税対策のため現金が必要になって、使っていない親の自宅を売却しようとしても、裁判所の許可がおりないことが良くあります。
また、認知症のお父様の財産は、以後成年後見人が管理しますので、お母様が生活費としてお父様名義の預金を使うことが出来なくなります。
そして、成年後見人には最低でも月数万円以上の費用がかかり、ご本人が亡くなるまで一生支払わなくてはなりません。
家族信託であれば、受託者は家族ですので報酬はなしでかまいません。
このような成年後見人制度は、利用しないに越したことはないのです。
あえて後見人を使うのであれば、任意後見人をおすすめします。家族や専門家を任意で後見人にできます。ただし、親の意思能力があるときに手続きをしておかなくてはなりません。
家族信託のデメリット
つぎに、家族信託の4つのデメリットをくわしく説明します。
意思能力があるときに信託契約を結ぶ必要がある
家族信託も任意後見人と同じで、親の意思能力があるうちに信託契約を結ばなければなりません。
すでに手遅れの場合には、どうしようもありません。
ただ、認知症になってしまっても、すぐに意思能力が無いことにはなりませんので、一度ご相談ください。
信託契約にコストと手間がかかる
家族信託を契約するにはコストがかかります。
受託者になった場合、年に一度税務署に信託計算書を提出する手間がいりますし、他の家族にも説明することになるでしょう。
契約はプロに依頼する必要があることと、不動産の名義が変わるため登録免許税がかかります。
具体的に、土地が固定資産評価額×0.3%、建物は固定資産評価額×0.4%の税金がかかります。不動産取得税はかかりません。
家族信託は公正証書で結ぶ契約ですが、その内容はプロに依頼しなければご自分達でできる物ではありません。
その理由としては、万人に合う契約書の雛形はないため、御一家にあったものを作成する必要があること。
将来トラブルの予測が難しく、契約内容の不備やルール不適合になってしまい、大きな欠陥のある契約をしてしまう可能性があること。
また、信頼できるプロに依頼すれば、信託が実際にスタートしたあとでも、ずっとアドバイスを貰えます。
ちなみに家族信託の目的となる財産は、金銭・不動産・自社株式・上場有価証券になります。
家族信託にも不動産にも自社株式にも強い専門家がいない
司法書士や弁護士でも、家族信託の細部に精通している人は極わずかしかいません。
法律家ですから法的に手続きはできるわけですが、御一家の相続の問題はそれぞれの不動産の特殊性であったり、会社をお持ちであれば自社株式のことや、税金対策など多岐にわたります。
特に財産が不動産や自社株式の場合、不動産・金融のプロであり家族信託のプロでもあるコンサルタントに依頼し、オーダーメイドで組立てることが必須です。
不動産の節税対策は別に必要
家族信託はそれ自体には節税効果はありません。
家族信託と併せて対策する必要があります。ただし、後から対策がすることが可能なように、家族信託の中身をつくっておくことができます。
信託した不動産は売却できるか
信託契約書に不動産の売却を含む条項を入れることで、受託者が売主となって売却することができます。
家族信託に精通した不動産専門家は少ないですが、普通に売却は可能なので心配ありません。
まとめ
これから人生100年時代に、財産オーナーご本人が途中で認知症になってしまったとき、家族が被る災難は多大であるかもしれません。
そのような問題を未然に防ぐために家族信託を使って対策することで、あなたの生活がよりよくなるでしょう。